【コラム】キルト職人奮闘記 VOL.18

キルト職人奮闘記 VOL.18

「お正月気分も抜けない頃辺りから静電気との戦いがはじまります。」

私の仕事はJキルトすべてに使われている中材のポリエステル白綿の製造です。

フィットカバーやセーフティカバーの中材であるポリエステル白綿を大型キルティングマシンに装着できるよう、原料となる圧縮綿を数種類ブレンドし、ロール状に加工することをメインとしています。

さて専用機械をスタートさせます。が、直後に「はきだしローラーに絡みついて綿が出てこない」・・・なんとか出しても次の段階、形や大きさを形成するところでアームローラーにからみついてしまう・・・などのトラブルがこの時期になると頻発します。そう、静電気が悪さするのです。解決できずロール綿が作れなければ製造ラインは止まり、当社のほとんどの商品が作れなくなり出荷できなくなってしまいます。繁忙期のライン停止は会社の存亡にも関わりかねません。当然私は対策を講じます。対策として、

 

  1. 原料である圧縮綿のブレンド配分を調整する
  2. 高価な帯電防止作用のある綿を原料に加える
  3. 帯電防止剤をブレンド時混ぜる
  4. アースを機械に取り付ける
  5. 機械を改造し、強制的に風圧で巻き付かないようにする
  6. 作業員が全身綿まみれになり機械下に潜り、こまめに掃除する

 

などを行います。この最後の⑥がとくに苦労します。まず機械周りを片付け機械下を掃除、そしてローラーを掃除する道具を即席で作りほっかぶりとマスク装着でいざ潜り込みます。中は暗く狭いため助手のライトを頼りに地べたに仰向けの状態で腕を伸ばし、ローラーに絡みついた綿をブラシできれいに取り除きます。夏は40度近い中での作業となり、目に入る汗も拭えません。20分ほど格闘したあとやっと脱出できます。終わっても上から降ってきた綿が襟首に入りその日一日は不快な痒さが続くのです。

まあ!いまでは機械下に潜らなくても外から掃除できる道具を作り、1時間かかっていた作業も5分で終わらせることができ随分楽になりました!そう、私たちの「製綿作業」はアサヒの製造の要であり、トラブルと創意工夫の鬼ごっこの現場です。

あらゆる問題と解決、苦労話もいまでは笑い話となっていますが油断は禁物、静電気による新たなトラブルに備え今日も気を引き締めているところです。

M・Mさん

※次回は3月15日発行の予定です。お楽しみに!