【コラム】美術大学生とのコラボ作品 第2弾

美術大学生とのコラボ作品 第2弾

私は今回、引越し用の梱包資材と小・中学校の学習机を組み合わせて災害時に避難所で使用する犬用ケージを提案しました。

ではなぜ、この犬用ケージが避難所で「絶対に必要だ!」と私が考えているのかを皆様に知ってもらいたいと思います。

私は東京都の区役所にペット同行避難についてのインタビューを行いました。すると、東京都のほとんどの避難所では災害時にペットも一緒に避難することが可能であることが分かりました。しかし、そのほとんどの避難所では飼い主がケージやクレートを持参することが条件とされています。小型犬のケージであれば片手で持てるほどのサイズですが、大型犬のケージを運ぶのは重労働です。しかも災害時となれば人の避難用品と一緒に運ぶことになります。この事実を知ったとき、今年で13歳になるラブラドール・レトリーバーの愛犬がいる私にとっても他人事とは思えませんでした。これをきっかけに避難所で大型犬も使用できるサイズと丈夫さ、しかも普段は省スペースで保管できるケージを何か提案できないかと考えるようになりました。ある時、近所で引越しのトラックから腹巻のような青い布に包まれた家具が運ばれるのが目に止まりました。「この布」についてインターネットで調べたところ伸縮性のあるキルティングでできた梱包資材だとわかりました。

梱包資材を避難所である学校の備品に被せてケージを作れないだろうかと考えだすと、最初はぼんやりとした願望だったイメージが色と形を持ったアイデアになっていきました。そして、最初は跳び箱やボール入れ、フラフープなども検討し、どの学校にもあり持ち運びも簡単な「学習机」を利用する案にたどり着いたのです。

しかし、ただキルティングの梱包資材を机に被せただけでは犬のケージとして成立しません。開け閉めできる扉が必要だし、全てがキルティングではケージの中が真っ暗になってしまいます。そのため特別な加工が必要でした。そこで特注で加工を施してくださるメーカーを探していたところ、株式会社アサヒさんと出会いました。とても快く引き受けてくださり、すぐにサンプルの素材とカタログを送ってくださいました。また、後日直接お話しする機会を設けてくださり、私のラフスケッチを元に素材を実際に見ながら技術面でのアドバイスをいただき改善を行うことができました。

その結果、最初は扉部分だけにメッシュ生地を使用することを想定していましたが、ケージの上全体にもメッシュ生地と伸縮性のないキルティングにすることになりました。それによりケージ内が暗くなりすぎることを防ぎ、更に組み立ての際に学習机にスムーズに被せることが可能な構造となったのです。

実際に工場で作っていただき、完成品を見たときは想像以上の仕上がりに感動しました。アサヒのオリジナルの青色とメッシュ生地の黄色が見た目にとても可愛らしく、また縫い付けが難しい扉部分のファスナーも丁寧な縫製で机にぴったりと被せることができました。実際にラブラドール・レトリーバーが入っても余裕のあるサイズで丈夫なキルティング生地は犬にとっても居心地良くケージとして十分に使用可能でした。

この完成品を実際に区役所の方に見ていただいたところ「ケージを持たずに避難してくるペットの実例もあるので避難所にあると便利」「扉部分が透けて見えるので安心できる」「畳んで収納できるのでスペースの問題はない」という感想と改善点として、「風が当たる場所での強度面」「ケージを重ねられる工夫」「学習机以外にも対応できないか」という意見をいただきました。これを元に災害時にどんな犬でも安心して飼い主と一緒に避難できる居場所を作りたいと一層強く思うようになりました。

最後に、お忙しい中、様々なアドバイスをいただき、制作にご協力してくださった株式会社アサヒの皆さまに心より感謝とお礼を申し上げます。

女子美術大学 芸術学部デザイン・工芸学科 M・Oさん