【コラム】キルト職人奮闘記 VOL.11

キルト職人奮闘記 VOL.11

初めてアサヒの工場に面接に来た時、キルティングマシンを見て「こんなに大きな機械を動かしてる工場なんだ!」と初めて見る大きな機械にびっくりしたのがとても印象的でした。今でもよく覚えています。それは縫製関係の仕事の経験がある私でも、ちょっと気が引けてしまうほどでした。

私は縫製業に携わって十数年経ちます。アサヒに勤める前は紳士服の縫製会社でスーツや婦人服のスカートなどの縫製を担当していました。流れ作業のため、とても忙しい業務でした。特にブランド物のオーダーメイドは、注文が細かく、縫い合わせの裏もめくって検査されるため、とても神経を使う仕事で、大変苦労しました。生地は薄くて軽いので、糸も針も細い番手の物を使用していました。縫い方によってはツレてしまうので、そうならないよう細心の注意を払って縫製をします。とても気を使う作業でした。

アサヒの入社し、工場で働くようになって、今までの業務と真逆のことを言われます。あまりに正反対に思えて最初は戸惑いました。製造しているキルトは分厚く重たく、針も糸も今までに使ったことがないくらい太いものでした。とても体力を要するその業務はまるで建築関係の仕事のように思えました。それでも縫製業独特の細かい作業もスピードも同時に要求されます。

製造部に所属する私は帆布の縫製を担当しています。硬く重たい生地に、あの分厚いキルトを挟み込んで縫い合わせていきます。それでも出来上がりではありません。何本もベルトを重ねて縫い合わせていき、更に補強のため今まで見たことの無い太い針がついた巨大なミシンを使います。ひと針縫うたびに地面が揺れます。腕や肩が痛くなるのは当たり前です。

今でもたくさん失敗をします。先輩に注意されたり、難しい加工に頭を悩ませることも少なくありません。でも、今まで続けてやってこられたのは縫製の仕事が好きだからだと思います。仕上がった商品を見るたびに達成感とともに嬉しさが込み上げてくる、そんな瞬間は何度味わっても飽きることがありません。次の瞬間、意欲が湧いてくるのです。そして、精神的につらかったとき、業務が苦しい時、悩むとき、一緒にいて励ましてくれた仲間。苦楽を共にしてきた従業員のみなさんと接することができる職場が、今は私の居場所になっています。温かい支援があり、良いパートナーに恵まれてこれまでやってこれたのだと思います。

出来上がった数々の商品もお客様の仕事を助ける道具です。この一点一点の商品も私のパートナーだと思って、これからも商品を磨き上げ、私自身もセンスや技術を磨き、より良い仕事ができる人になっていきたい。今はそう思えるようになってきました。

K・Aさん

※次回は7月15日発行の予定です。お楽しみに!