【コラム】美術大学生とのコラボ作品

テキスタイルデザインと梱包資材

多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイル専攻 Y・Uさん

 

引っ越しをする際、大型家具や精密機械などを保護するために梱包資材が使われている。青と黄色のカバーに包まれた冷蔵庫やテレビなどが運び出されトラックへ積まれる様子は誰しもが見たことのある日常の光景だと思う。

私はなぜ引っ越しのカバーが青なのか不思議に思っていた。もっと明るくて楽しい柄のカバーで大切な家具たちを包むのはどうだろう。

引っ越しの時、もしカラフルなカバーに包まれた家具たちが建物から出てきたら、それはきっと芸術と日常の間のような風景、インスタレーションアートになる!

梱包資材は日常にテキスタイルアートを感じられる可能性を秘めていると確信した。

梱包資材をデザインする際に押さえるべきポイントがいくつかあった。

まず引っ越しというのはスピーディーかつ安全に行われなければならないこと。 素早く被せることができ、丈夫で使い捨てではなく、何年も使えるものでないといけないこと。そして最後に、高度な縫製技術を持ち合わせメイドインジャパンにこだわり、特注カバーも作っている会社が協力してくれることだ。希望に合致する会社があると知りすぐに連絡をした。快く協力してくださったのが株式会社アサヒである。

多摩美⑦

フィットカバーのデザインをする上で汚れても目立たない柄、カラフルでハッピーを感じられる色、天地のない柄、縫製で横に縮むため変形してもおかしくない柄、ということに注意した。

子どもがクレヨンで落書きをしたようなラフな柄とカラフルな緩い線のチェック柄のデザインをシルクスクリーンプリントし、表に見える糸は通常青だが、白に変えて縫製をしていただいた。出来上がった物は今までに見たことのないテキスタイルだった。また丈夫さと利便性を兼ね備えた縫製技術で、細かいゴムのギャザーの入ったフィットカバーの形自体がかっこ良かった!梱包資材とテキスタイルデザインの可能性を肌感覚的に感じた瞬間だった。

完成して、デザインにおける反省点はより汚れが目立ちにくく、かつ街角で目を引くデザインにするべきだということ。またフィットカバーは長い布をギュッと縮めゴムを入れて伸縮性を出すためギャザーの凹凸が出来る。その凹凸感が面白いためもっと際立たせるような奥行きのあるデザインにしても良さそうだという点である。

是非いつか実際に使えるカラフルなフィットカバーをデザインしたい。きっとこのハッピーなカバーに優しく包まれた家具は新しい住居に幸せを運んで行くに違いない。カバーのテキスタイルが変わるだけで引っ越しが楽しくなる。そして引っ越しシーズンの街角がきっとステキになるの。

締め切りまで時間もなく拙い企画書をFAXで送った私の課題製作にスピーディーかつ温かくご協力してくださった(株)アサヒの皆様に深く感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。