コラム 「レースの現場で活躍!」

コラム 「レースの現場で活躍!」

H O N D Aのレースチームである「無限」のエンジニアさんから注文をもらいました。実はこの方、以前にもアップしている、「フロントウイングのカバー」のご愛用者で、今回の注文はそのカバーの改造と同時に、新しい「タイヤラックカバー」もご注文してくださいました。その注文から、打ち合わせ、設計、製造、そしてフィッティングまでのJキルトの物語を皆様に共有したいと思います。

1.打合せ編

以前の注文から、結構時間が経ってはいましたが、連絡をいただき、すぐにレーシングカーのウイングが思い出されました。それだけ印象的な保護カバー制作だったのです。
そこで、営業2人で打ち合わせにお伺いさせていただきました。本社の1Fに到着して、エアコンの涼しさを噛み締める余裕もなく、目に飛び込んでくるのはF1のレーシングマシン。バイクや写真の展示も印象的です。トランスフォーマーのようなバイクを組み合わせたロボットもショーウインドウの角に仁王立ちして、こちらを見つめている様は、男心をくすぐるショールームそのもの。

実際の打ち合わせは、ショールームではなく、さらに奥深くのマシン工場にて行われました。今回のカバーのご用命は、実際のレース会場に設置する「監督席」、しかもそれが簡易組み立て式になっています。移動時には箱型になっており、使うときにはそれを開いて、人が入って座れるブースになるそうです。このカバーの要望は、四つ角の辺に補強をして欲しいということでした。

さらに今回のチャレンジングなカバーは、フォーミュラ1、レーシングカーの太いタイヤを載せる「タイヤラック」でした。エンジニアさんと話していて、明確なカバーイメージをしっかりと持っておられるのに驚きながら、聞き取った今回の提案は、ラック全体ではなくて、タイヤホイールのみをカバーして欲しい!というものでした。理由はラック全体をカバーすると、ラックの角がトラックのうち壁にぶつかって、カバーが痛むこと、そして穴が空いて雨などが入り込むと、タイヤについているセンサーが濡れて壊れてしまう危険性があるということでした。

その切実な理由を聞いて、Jキルトカバーの老舗メーカーを名乗るアサヒは、腕の見せどころ!とばかりに、営業マン2人で知恵を絞り合って、その場で簡単なイメージ図を描きました。当然キルトの表面はコーティングの生地を利用したもの、そして黒のキルトで提案をした上で、了解をもらい、詳細な図面は帰ってからお送りすることにしました。さらに今回は「無限」のロゴマークをA3に印刷したターポリン生地を縫い付けることで、お客様のP Rに少しでもお役立ちできると確信を深めたのでした。

IMG_1787 (カスタム)

2.製造編

さて、次の問題は製造側に降ってきました。営業が作った図面をもとに、製造図面に落とし込むことが今回のような複雑な形状の製品の場合、非常に繊細で困難を極めます。そして今回の難題の一つが、現物に合わせながら作ることができないという点です。現場の職人さんと責任者、営業とのバトルの始まりです。

「ここは50mmでいいのですか?足りますか?」とか「この形で、フィッティングしたときに、角に出ますか?」など、想像力をフル動員して、関わる一人一人がカバーをかけた時を想像しながら、詳細な部分の寸法などを計算していきます。
さらに、角の補強が欲しいという「ブースカバー」に関しても、別パーツで角の養生材をつけるか?などいろんな意見を精査した上で、キルトでボードを閉じ込んで作るという、難しい手法にチャレンジすることになりました。

はい!ご想像の通りです。チャレンジに次ぐチャレンジで、職人さんも工場責任者も「本当にこれでピッタリフィットするのだろうか!?」と不安と期待を両方持ちながら、ものづくりを進めていきました。笑っているのは、最初に打ち合わせをした営業マンただ一人・・・

image4 (カスタム)

3.フィッティング編

そうです。営業マンだって不安がないわけではありません。お願いした職人さんの腕を信じてはいるものの、自分の初期設計にミスがあるかもしれない不安を拭えないまま、フィッティングのアポイントの日になりました。
前回打ち合わせにお伺いした工場に、自信満々の大股歩調で入っていくのと裏腹に、カバーを持つ手は緊張に震えていました。
まず初めにブースカバーをかけます。また2人での訪問だったので、スーパーマンのマントさながらに、バサッという音と共にブースに被せました。すると・・・何という事でしょう!ぴったりもピッタリ、シンデレラフィットと言わんばかりでした。
それを見てご注文下さった担当者の方も大絶賛!私たちも涙が出そうになりました。

そしてとうとう心配していた、新しいタイプのタイヤラックカバーの試着です。早速ラックが用意され、カバーをかけてみました。奇跡は二度起きるのか?そう思ったのも杞憂だったのか、「こちらも完璧な仕上がり!」。これは自画自賛ではなくて、注文をくださったエンジニアさん二人の口から洩れた言葉そのものだったのです。

こうして、今回のチャレンジングな特注カバーの打ち合わせから納品までが怒涛のような速度で感動をもって終了したのでした。お客様からは「職人さんによろしく伝えてください。素晴らしい技術ですね」と、うれしいお土産の言葉も頂くことができました。