【キルトStudyプラス】「アサヒの綿は生綿(なまわた)です!」

【キルトStudyプラス】「アサヒの綿は生綿(なまわた)です!」

よわい、アラロクにもなりますといろいろ思い過ごし的なことが多くなってまいります。なんだか胸が苦しいなぁ心不全か?と思ったら呼吸で息を吸い忘れていたり、視力がずいぶん落ちたなぁと思ったら「おでこメガネ」だったりと、まあいろいろです…。それでも、長年携わっている機械の運転や材料の調合などはより敏感になっていくものです。機械の異常などはちょっとした音の違いで分かりますし、材料の違いは静電気の量が多いか少ないかなどで、「これはインドネシアだね!」などとワインのソムリエのようにしてあてることが出来るほどです。
こんな私が担当者として日々作らせていただいております製品の中で使用されているキルト綿は、薄く軽くかつ弾力性があり、反発力に優れたものへ仕上げています。

当社の使用する綿は「ポリエステル綿」で、カード成型によるロール綿です。特徴としては白く軽く且つ弾力性があります。キルトに使用される綿の種類はこのほかにも「黒綿」や「硬綿」などがあります。「黒綿」はリサイクルフェルトといわれ、古着などを解繊してニードルパンチしたもので、黒っぽく重いですが、干渉性は高いです。当社も自社製造していませんが、ピアノ用の当て材など重量のあるものに当てる養生材には使用しています。「硬綿」は、ポリエステル綿の表面に樹脂を塗布して固めたものです。移動などをしても綿の飛散がない安定した形状を保つことができます。ただし、黒綿は製造する場所がものすごい量のホコリにまみれてしまいます。また、樹脂綿を作るとべたべたの樹脂が機械中につくことになります。
そこで当社は「自給自足」!本日使う分をその日に作る方式で、綿の飛散やくっついてしまう現象を抑え、「生綿(なまわた)」のまま使用する方法に辿り着きました。これがJキルトの綿です。

綿の中身を紹介しましょう。
特性の違う原綿を3種類ブレンドして、成形機を通して約2メートル幅×15m巻のお化けきしめんみたく、大型縫製機・多針ミシン(キルティングマシン)にセットできるよう規定のサイズに生成しているのですが、この原綿、3種類のうち2種類は入荷ロットごと特性が微妙に違うのです。様々な理由で入手困難だったりして、いろんな製造元のものを仕入れ分けしているのです。できあがるととても縮んでしまい規定のサイズにならないもの、ふっくら感がなくベタっと潰れてしまうもの、反対に発泡しすぎて分厚い綿になってしまうもの、静電気を帯びやすく生成自体できないもの、など様々です。

特にレギュラー綿にはリサイクル綿を使用しており、毛足の細いものを使用していますので、こういった静電気の問題も多く発生しがちです。PET再生綿でも白色のものでグレードの高いものを厳選して使用しています。
中空コンジュ(拡大するとストロー状に繊維の真ん中に穴が開いている)にはバージンの国産綿を多く使用しています。他の種類の綿の結着力を上げる「つなぎ」の役割を果たしています。
また、安定した品質を維持しているのは、国内の半毛工場により加工されたウーリー半毛です。長くお付き合いしている半毛工場さんが細心の注意を払って、白い糸のみをより集めて、ガーネットという製綿機のお化けのように大きな半毛機械にかけて作っています。

この3種類を「Jキルトブレンド」することで、ふんわりとした風合いで、羊毛に近い肌触り、コシのある綿に仕上がるのです。このJキルトブレンドは個性強い原綿たちを均一な基準に近づけるよう自分のブレンダーセンスでうまく調整しているだけではなく、実は先輩方の長年の蓄積ノウハウにより誕生したものなのです。

綿の均一化はカード機の針先がしっかりしているかにかかっています。そのため、5~10年に一度それぞれの針を巻き直します。この技術と針のメーカーも日本に数社しか残っていないため、細心の注意を払って機械のメーカーと連携しながら整備を行っています。

次なる目標は綿を作るが如く、この技術を受け継ぐ若者をつくること!しかし人は綿のようにはいきません。ですが同時に、製綿で培った耳、目、触覚を人材育成にも応用すればきっと良い人が育ってくれるはず!と思う今日この頃です。お後がよろしい様で。

M・Mさん