株式会社アサヒ

失敗が教えてくれた、モノづくりの奥深さ

失敗が教えてくれた、モノづくりの奥深さ

『失敗』というと悪いイメージがあるかもしれません。しかし、ものづくりにおいて「失敗」は技術を向上させるための貴重な財産であり、最高の教師です。

キルトやシートをミシンで縫製する際、生地のズレや目飛び(縫い目が飛んでしまうこと)、糸調子や送り歯の調整に悩むことは決して少なくありません。

「上手く、早く仕上げなければ」という焦りが生んだミス

私も以前、キルト生地や特殊なシートの縫製に挑んだとき、最初の仕上がりは散々なものでした。

中綿が入って厚みのあるキルトに対し、特殊シートは薄くて滑りやすくなっています。そのため、ミシンの送り歯がうまく生地を噛まず、上下の生地でズレが生じてしまったのです。 また、ベルトやマジックテープをキルトに縫い付ける際には、キルトが伸びてしまったり、「いせこみ(ゆとりを持たせて縫い縮めること)」を意識しすぎてシワになったりしたこともありました。

焦るあまり針が折れ、大切な生地の表面を傷つけてしまったことも……。 「上手く、早く仕上げなければ」という焦りの気持ちが、かえってミスを誘発していたのだと思います。

 

ベテランの先輩からの言葉「生地の声を聞きなさい」

壁にぶつかったとき、ベテランの先輩に相談をしました。すると先輩は、ご自身も数々の試行錯誤と修正を繰り返しながら技術を磨いてきたのだと優しく話してくれました。

そして、私にこうアドバイスしてくれたのです。 「生地の厚み、滑りやすさ、反発力はそれぞれ違う。生地の声を聞き、焦らず自分の手で動きをコントロールしなさい」

具体的には、生地を送る指先でわずかにテンション(張り)をかけること、素材に合わせた適切な針を選ぶこと。そして何より、「急がずに、一針一針に気を配り、丁寧に」作業することの大切さを教えてもらいました。

遠回りに見えて、実は一番の近道だった「丁寧さ」

先輩の教えを守り、シートの硬さやキルトの弾力を指先で感じ取りながらミシンを進めました。すると、生地が逃げることなく、縫い目がまっすぐ美しく描かれていったのです。

技術が向上しただけでなく、結果としてやり直しの時間が減り、作業全体のスピードも自然と上がっていきました。機械任せではない手仕事の奥深さと、技術の本質を体感した瞬間でした。

今日も一針一針に想いを込めて

失敗はただのミスではありません。素材の特性を知り、道具との対話を深めるための貴重なプロセスです。

先輩たちが積み重ねてきた『丁寧さ』こそが、確かな品質を生み、お客様からの信頼に繋がっているのだと実感しています。

今日も私は、一針一針に想いを込めながら、目の前の生地と真っ直ぐに向き合っています。

Y・Oさん